先日、ある雑誌の医学部受験に関する記事がwebニュースで配信されていたのですが、それについて思うことがあったので、意見を書かせていただきます。あくまで、医学部受験生の父親として体験したり勉強したりしてきた知識をもとにしたものなので、あくまで個人の意見としてお聞きいただければと思います。
目次
医学部人気が低迷!?していくのは事実なのだろうか
以下が私が見かけた医学部受験に関する記事です。
河合塾の調べによると今年の医学部の志願者数は国公立大の前期日程で前年比90%の約1万4700人と大きく減少。ここ20年で最も少ない数字になった。私立でも前年比96%の約8万3200人だった(5月12日時点判明分)。2年連続の減少だ。医学部受験関係者からは「医学部バブルは終わった」との声が出ている。志願者が大きく減った理由について岩瀬チーフはこう分析する。
「18歳人口の減少に加え、18年に女子差別などの入試不正が発覚したことによるイメージ低下が影響していると思われます。AIなどを学ぶ情報系学部・学科の人気が高まっており、現役の成績上位層で医学部を目指す受験生が減っている。他方で、医学部志望の浪人生合格につながり、志願者の総数が減ってきています」
倍率(志願者数/合格者数)も下がってきている。国公立大前期では18年に4.4倍、19年に4.3倍だったのが、今年3.9倍に。私大では18年に16.9倍だったのが、19年に13.7倍、今年は13.6倍と競争が大きく緩和されている。今後偏差値が下がる医学部も出てくると見られる。
来年の入試はどうなるか。受験関係者の間では、コロナ禍の影響で志願者が減るという見方が出ている。志の高い志願者がいる一方、危険な職場で働くことに躊躇(ちゅうちょ)する受験生や保護者も多いと見られるからだ。ある予備校の幹部はこう見る。
「いま医療現場はまさに戦場。今後も同じことが起こり得るわけで、飛び込んでいこうと思う受験生は多くないでしょう。最近の生徒は安全志向でリスクを嫌いますからね。ただ、本当に医師になりたい人には合格のチャンスが巡ってくる」
※週刊朝日 2020年6月5日号より抜粋
この記事には私としては少し腑に落ちないのでモノ申したいと思います。※ただ、ネットニュースの抜粋版を読んでの感想なので、あしからず。
この医学部への志願者数がこの2年程で減少してきた原因には複数あると思うからです。もちろん記事のように医学部の入試不正によるイメージの低下はあったでしょう。しかし、医学部を目指している学生なら、こんな男女の差別や、現役生と浪人生(年齢差別)があることはみんな知っていてあたりまえの事でしたから。だから、受験生はどの大学が不利か不利じゃないかを調べ、自分の条件でできるだけ不利にならない医学部選びをするのが作戦の内なのは常識。
逆に、いまさらこんな差別があるのかと驚いていることに逆に驚きです。
もちろん、こういった年齢や性別による差別があることを肯定するつもりはありません。しかし、それを犯罪のような「悪」と決めつけることもできないと思うんです。それは、医療現場を正常に機能させるために生まれた「必要悪」なのですから。
辛辣で嫌な表現を敢えてさせていただきますが(お許しください本心ではないですから)、
●60を超える高齢の新人医師が配属された病院は、他の医師に負担は行きませんか?
●女性医師が産休に入った時に人員補給がされないまま産休明けを待つ場合が多いですが、その間に他の医師への負担はどうですか?
若くて働き盛りの医師に絶対にしわ寄せがいくのです。残念ながら、高齢新人医師や女性の妊娠出産をカバーできるだけの体制が整っていないのです。その体制がない中で、差別を声高に叫んでも医療現場からは冷ややかに見られているだけです。実際に、女性医師からは、男女で合格者の比率を変えることもある程度やもを得ないという意見が出ているほどです。男性医師比率が高い職場の方が産休も取りやすいのも事実でしょう。
有名な裁判で
筆記試験で合格者平均点を上回りながら、面接で高齢を理由に不合格にされたとして、群馬大医学部を受験した東京都目黒区、主婦佐藤薫さん(56)が同大を相手取り、入学許可を求めた行政訴訟の判決が27日、前橋地裁であった。同大が「医師には知力・体力・気力が必要」などと説明していたことについては、合理性があるとした。
というのがありましたが、ご存じでしたか。この裁判の結果は、ある意味国が年齢による差別というか、線引きをしてよいということを認めたに等しい判例ではないですか?
医学部志願者が減少したもう一つの原因は試験方式の変更
この2年で医学部志願者が減少したのは、どちらかというとセンター試験制度から大学入学共通テストへ2021年から移行することによるものだと思うのです。新試験制度への不安感や浪人してしまうと現行のセンター試験ではない学入学共通テストを受けなくてはいけなくなる。そうなると絶対に浪人はできない。医学部は浪人する確率が非常に高いから避けなければ!そういった安全志向の心理になった受験生やその親、また周囲の担任や塾の思惑が見え隠れするのです。この記事がそれに触れていないことに、違和感を覚えます。
今後も医学部志願者が減少するのかどうかは不況の状況にも左右されるのでは
また、コロナの影響で危険な医療現場を敬遠する受験生や保護者が多いと見られると書かれていますが、確かにそういった見方もできるでしょう。しかし、この記事も偏った意見に読み取れて仕方がありません。コロナの影響は医療現場だけでなく、経済にも大きな打撃を与えていて戦後最大の不景気をもたらしつつあります。大企業は採用を控え、リストラも進むでしょう。その中でやはり安定志向として医者を目指す受験生は必ず増えるはずなんです。
過去のリーマンショック前後の医学部志願者数の推移を見てみましたが、医学部定員の増加等の不確定要素もありこれを過去の数字で裏付けることは出来なかったのですが、少なくともリーマンショック後の数年間で医学部志願者数は増加しているのです。むしろリーマンショック後の不景気が医学部受験を加熱化させた要因だったわけです。ただ、リーマンショック後の不景気が金融破綻が原因だったのに対して、今回はコロナによるものだという違いは大きいのかもしれません。
結論
結局のところ、週刊朝日の記事も、私の意見も憶測でしかありません。2020年度は不確定要素が非常に多く、受験者数の予想が非常に難しいということです。受験生とその保護者の皆さんは、私の意見も含め、このようなニュースにいちいち踊らされることなく、とにかく実力をつけることに専念しましょう。どんな状況であっても、実力さえあれば勝のですから。