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医学部を目指す受験生と保護者の皆さんに伝えたいこと

医学部受験生の地域限定枠避ける傾向から地域枠削減

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目次

医学部受験の地域枠は一般家庭の救世主なのか?

受験生の皆さんや保護者の皆さんは、この「医学部地域枠」というものをご存知ですか。知らなかったら勉強不足です。特に我々のようなサラリーマン家庭のように経済的余裕がない場合には、この地域枠は救世主になる可能性がある制度だからです。

何せ、この地域枠を利用すれば、一般入試ほどの偏差値がなくても合格できる可能性が高まるだけではなく、学費も免除になる奨学金制度もセットになっているのですから。

この地域枠によって、経済的な理由で医学部進学を諦めねばならなかった一般家庭の受験者にも夢を実現する可能性が生まれるのですから、よくよくそのメリットとデメリットも含めた制度の研究をしておいた方がいいと思います。

医学部受験の地域枠とは

地域枠とは、地域の医師確保を目的に、都道府県が大学医学部の学生に奨学金を貸与する制度です。医師免許取得後、都道府県内の特定の地域や医療機関に貸与期間のおおむね1.5倍(9年間)の期間従事した場合、奨学金の返還が免除されます。入試も、多くの場合は高校からの推薦された学生を対象にし、入試自体の免除または簡易的な試験だけになる場合が多いです。各地域によりその内容は異なりますが、推薦入学的な要素もあるようです。

この地域枠を導入する医学部は、2008年度では33大学でしたが、次第に全国へと広がり、現在ではほとんどの医学部がこの地域枠を導入しています。

その割合は、全医学部生の18%以上に達しているそうです。

敬遠される地域枠は削減の方向へ

先に行われた文科省の調査によって、この「地域枠入試」での欠員が多く、過去11年間で2,600人分の定員が埋まっていなかったことが判明したそうです。大学は埋まらなかった分を勤務地に制限のない「一般入試枠」として入学させていたため、大きな問題に発展してしまいました。

厚生労働省は、この状況を重く受け止め、医学部定員の直ちに削減する計画をしていましたが、直近の2020年度と2021年度については、「現状の定員数をおおむね維持する」ことになりました。その年度の受験生が混乱しないための配慮からです。

しかし、2022年度以降については、「医学部定員は減らす方向」で提案が出されていて、医学部関係者らも、おおむねこの案を支持しているそうなので、おそらく削減は実施されるでしょう。

地域枠とは関係なく医学部定員の削減が避けられない理由

なぜ医学部定員を減らさなければならないのか。その根拠として、厚生労働省は今後の医師の需給推計を掲げています。

それは、2033年頃には、医師数約36万人で需給が均衡してしまうというものです。すなわち、2020年度の医学部入学者が臨床研修を修了する2028年頃に医師数が充足し、それ以降は医師過剰の時代に突入するという推測です。

別の業界では、例えば弁護士。司法試験合格者が増加した影響で弁護士人数が飽和し、少ないパイを弁護士間で取り合うことで、結果的に仕事がなく収入の少ないため生活できない弁護士まで現れるようになってしまいました。

医師の世界でも同じようなことが起こる可能性があるのです。

関係者からは「医学部定員だけでなく、医学部の卒業試験、医師国家試験の段階などで医師数の調整が可能と思われるので、医学部定員は一定数確保してほしい」などの要望が挙がったそうです。定員減で医学部学生が減るということは、大学にとって学費=収入が減るということですから死活問題ですよね。

ただ、こんな要望は私たち学生やその保護者にしてみれば、とんでもないことで、それは医学部に入っても医者になることができない学生を増やす!ということに他ならないのです。現在でも少なからず医学部に入ってもリタイヤしてします学生はいます。でもそれは努力不足が大きな原因です。最初から医師になれない一定数を見込む制度は絶対に許すことはできません。

医学部地域枠がなぜ敬遠されるのかそのメリットとデメリットを見てみよう

医学部地域枠は、入試難易度も軽減され、奨学金ももらえる、サラリーマン家庭に取っては夢のような制度にも見えてしまいます。しかしなぜ敬遠され、定員割れしてしまうのでしょうか。それには理由があるはずですね。

ここでは、この医学部地域枠のメリットとデメリットを探っていきたいと思います。受験生も保護者の皆さんもよくこの点を理解した上で、この制度を利用するかしないかを考え、担任の先生とよく話し合っていただけたらと思います。

医学部地域枠のメリット

地域枠入試とは、医師不足や診療科の偏在が問題となっている地域で、将来、地元の医療を支えてくれる受験生のための入試です。厚生労働省が導入したもので、医師不足の解消、地元占有率の向上、奨学金・修学資金の貸与による一般家庭からの進学者の増加などがメリットとして挙げられています。

この制度を利用する受験生にとっては経済的負担が軽減される、地方自治体にとっても医師不足が解消されると、良い点が目立ちます。

医学部地域枠のデメリット

厚労省が美辞麗句を並べるこの地域枠入試には大きな落とし穴があるんです。

地域枠入試の合格者には自治体から奨学金が給付されるされますが、9年間行政が指示する医療機関で働けば、返還義務がなくなります。反対に9年間働かなければ、これは基本的には貸与であり、利子を乗せて返還する義務が生じるということになるのです。

実際、地域枠入試の説明書には、貸与された金を返せば、地域勤務に従事しないでいいと記載されているため、一部の医師は離脱するようです。実際、厚労省の2017年度の調査によれば、地域枠の医師は卒業後研修期間が終わる4年目の時点で約10%が離脱し、別の地域へ移動しているようです。この時の返金する金額が幾らかは公表されていませんが、かかった経費相当額ですから3,000万〜5,000万円程度ではないかと思われます。

こんな金額、普通のサラリーマン家庭では払えませんから、おそらく他の地域の病院が立て替えてくれての引き抜きによるものではないかと私は考えます。防衛医科大学と同じです。防衛医科大も優秀な卒業生は引き抜きが行われることは知られています。

また、このような金銭的な面だけではなく、やはり将来MRIなどもない僻地に生かされるため、高度な医療を身につける機会が失われ、医師として成長、出世していくことは難かしいと言われています。

メンツの面は本人の考え方次第なのですが、周りは過酷な正規医学部試験を合格して来た医学部生ばかりですから、どうしても周囲から「地域枠=学力が劣る人」「推薦=コネ?」と見られることがあるようです。

地域枠の義務を果たさない病院と医師に向けられる社会的ペナルティ

この事態を重視した厚労省は、2017年9月に全国の初期研修受け入れ病院に地域枠の学生のリストを配布し、地域枠と知りながら採用した場合は補助金減額もありうると通知した。厚労省は、地域枠の学生の個人情報を本人の同意をとることなく、病院に配付しています。

実際に2018年度には、この補助金減額のペナルティをいくつもの病院が受け、その病院名も公表されているのです。

また、地域枠の義務を果たさず離脱した医師への社会的ペナルティがあるようです。制度的なペナルティは明記されてはいませんが、医療の世界では冷遇される恐れもあり、また一生そのような目で見られる可能性もあることを覚悟しなければならないうようです。

まとめ

いかがでしたか?医学部の地域枠のメリット、デメリット。それぞれどう解釈するかで評価は分かれると思いますが、真に地域医療に貢献したいという尊い目標を持ってこの制度を利用す利用するのであれば、こんな素晴らしい制度はないかと思います。

逆に、この制度をある意味悪用して単に安上がりに楽に医者になれる早道とするならば、大きなペナルティを受けることになる制度かもしれません。

受験生とその保護者の方は、将来のことを今決めることは難しいかと思いますが、少なくともこの制度の利用を考えるなら、他の受験生以上にどんな医師になりたいのかを考えておく必要がありそうです。

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