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医学部を目指す受験生と保護者の皆さんに伝えたいこと

医学部に入ると医者にならないといけないのかという議論について思うこと

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高校生活3年間の中で、進学する大学を選ぶというのはまだ17や18の年齢には酷なような気がします。ましてや医学部を目指すのかどうかの決定なら尚更です。なぜなら、医学部だけは、そのまま医者になるという道がある程度決定してしまうからです。ある意味、医学部に入るということは、医療の世界に就職を決めてしまうのと同じ意味を持つのかもしれません。

・・・と、私は思っていましたし、世間でもそういう風に思われているでしょうね。

医学部生の父親の立場でも、我が子が医学部に合格した時には、ああ、これで安心。医者になれる・・と喜んだものです。

父親の立場では、自分の子供がステイタスある、また安定した職業である医者になってくれることを切望するのは当たり前です。しかし、最近、こう言った医学部受験のブログを書きながら色々考えていると、客観的な立場では、少し考えが変わって来たのでそれをお話ししたいと思います。

先に、結論を言っておくと、父親としての考えも、また総合的に判断しても、

医学部に入れる力があるなら、とりあえず医学部に入っておいた方がいい!

ということです。その辺の根拠をこの後お話ししていきたいと思います。

目次

「医学部に入る=医者になる」でない道もある

医学部に入り、卒業資格を得て、医師国家試験に合格し医師免許を取得する。これは一般的な流れです。その後に、臨床研修を2年以上(普通は前期後期で合計4年間ほど)医療の現場で経験を積むことになります。この臨床研修を受けないと、いくら医師免許を持っていても医療行為はできないと医師法で定められているからです。

実は医学部に入って医師免許を取得しても医者にならずに、別の医療に携わる道を進んだり、全く違う道に進み成功している人は大勢います。それは他の学部でも同じことでしょう。文学部を出たらみんな出版社に就職しますか?理工学部を出たら飲食系の仕事はしてはダメですか?そんなことはないですよね。みんな、大学在学中に学びは学び、将来の職業は職業として考えているわけですから。

ですから、医学部に入っても、必ず医者にならないとダメ!ということに縛られる必要はないということです。

むしろ、医学部で学んだ医療知識で別の世界でやりたい事を成功させると言う道も考えていいのです。

医学部は多額の税金が投入されているから医者にならないの非常識!?

この議論はいつの時代も議論されますが、答えのない議論だと思います。

よく言われるのは、「医学部生を医者に育成するために一人当たり1億円の税金が投入されている。だから、医学部を卒業したのに医者にならないのは税金を無駄遣いしたことになる」ということです。

1億円という数字は、ある程度の算出根拠のあるものだろうと思います。実際に、我が子の医学部での生活を見ていると、本当に多くの資金が学生本人だけでなく施設にも投入されているのが分かります。

最近では、医学部を卒業して医師国家試験も合格しておきながらテレビ局に入局した新人がいたことで、大きな波紋を広げたのが記憶に新しい出来事でした。本人はかなりパッシングを受け、医師たちからもかなり批判的な意見が出ていたようです。

確かに、投入された税金のことを考えると、医師免許まで取りながら医師にならないのは非常識に思えます。また、その人が合格することで、本当に医者になりたかった人が一人不合格になっているのも事実です。他の人の夢を奪ってまで医学部に入り、多額の税金を投入してもらって医師免許を取得しながら医師にならない。客観的事実だけで判断すると、絶対非常識な学生でしかありません。

しかし、医学部で得た知識を元に、テレビ局でドキュメンタリーなどの番組作りやニュースを作るとしたらどうでしょう。そういった番組情報を通じて、医療現場をバックアップしたり、また検診の大切さを伝えたりすることで社会への多大な貢献をすることができるかもしれません。実際、今回話題になった新人もそう言ったことを目指しているようでしたので、責める気にはなりません。

要は、医学部に行き医師免許を取得した後、何を持ってして社会に貢献していくのかで真価を評価すればいいのではないでしょうか。決して医師として臨床現場に立つだけが、医学部卒の人間の役割ではないと思います。

分かりやすい事例を挙げておきましょう。

例えば漫画家の手塚治虫さんは、医師免許を持っている漫画家として有名でした。そして医学の知識をもとに「ブラックジャック」を描き上げました。あの漫画の読者で医者に憧れ、医者を目指す若者がどれだけ増えたことか。また、医療の世界をフィクションとはいえ、小さな子供にまで関心を持たせることができたのは社会への大きな貢献ではないですか?

もう一人あげるなら、慶應義塾大学医学部卒で医学博士の向井千秋さんです。彼女は医師として働いた後、日本人女性初の宇宙飛行士になりました。彼女が宇宙飛行士になれたのには、医学の道で学んだことと無縁ではないでしょう。現在彼女は臨床現場ではなく、宇宙航空研究に携わる一方花王の社外取締役に就任されるなど他方で活躍されています。向井さんも医学の知識や経験をスタートとして、広く社会に貢献されているお一人です。

医師を育成するために多くの人の善意の気持ちが捧げられている

医学部に入り医師免許を取ることができるまでには、多くの税金だけではなく、多くの善意が捧げられていることも忘れてはいけません。その際たるものが、「献体」ではないでしょうか。大学2年目には解剖学実習があり、実際に人間の体を解剖していきます。そこで、医者の卵である医学部生は生の人間の体の内部を学ばせていただくことになります。それが可能になっているのは、生前に医療への貢献のために献体の意思を示していただいた方々の尊い善意によるものです。そして、臨床の実習では実際の患者さんに触れさせていただいたりするのもやはり善意によるものです。

医学部で学び、医師免許を取得することは独学では学べないのです。このような過程を経験してなお、医師にならない選択をする方は、その人なりの思いや決意、そして目指すべきものを見つけたと思うべきでしょう。それは本人にしかわからないことです。外野がとやかくいうことではないのです。

ただ、この多くの善意の元で学ばせてもらった経験と知識を無駄にだけはしない道であって欲しいとは思います。

・・・まあ、とやかく言っていいのは、親だけでしょう。親もまた、医師になるまで献身的に経済面、精神面で支えてきた一番の理解者なのですから。もし我が子が、医者にならないと言い出したら、おそらくぶっ飛ばすでしょうけど・・・

医学部は医師として活躍することを期待して入学を認める所?

医学部は、医師国家試験の受験資格を得るための場所と定義することができるかもしれません。言うなれば医師育成機関のような所です。ですから、医学部試験には小論文や面接まで課せられます。いくら勉強ができても、倫理観、人間性で医師に向かない受験生は合格することができません。少しでも優秀な医師として、少しでも長く働いてもらえる人間を入学させたい訳です。

それが明確にわかる事例として次の裁判を紹介しましょう。

ある裁判とは、56歳の女性が医学部試験で合格平均点以上の得点を取ったにもかかわらず不合格になり、それを不服として大学を訴えた事例です。裁判の最終的な判決では、この56歳の女性の訴えは認められませんでした。判決は大学側が「総合的に判断して不合格にした」という理由を全面的に支持したものでした。これは、56歳で医学部に入学しても、そこから6年の在学期間、そしてそこからさらに約4年の研修医期間を経るとすると、医者として臨床現場に立てるのは66歳の時ということになり、そこから一人前の医者として何年活動できるか?ということが問われたことになるのです。一般企業なら、とっくに定年退職している年齢です。極端な言い方を語弊を恐れず言ってしまうと、医者として従事できる年数が少ない者に1億の税金を投入して医師に育成する価値はない!ということなのです。

これが普通の大学の普通の学科なら、56歳でも試験で合格点を取れば必ず入学できます。むしろ高齢で合格できたことが美談になるかもしれません。それは、基本、個人的な学びの場としての学部だからです。医学部と一般学部とでは、社会から求められる責務が全く異なるのです。一般の大学でも運営交付金という形で多額の税金が投入されているにもかかわらず、医学部だけ税金問題が叫ばれるのは、釈然としないものはありますけどね。

本当は医学部は医療の知識を得てその知識を持って社会に貢献できる人間を育てる所では

現代では、様々な業種や様々なエリアで医療の専門知識のある人材が必要とされています。それは何も臨床現場ばかりではありません。医療研究の場を目指すこともできますし、企業への就職もいいでしょう。先の事例で紹介したような医学部卒のテレビ局員のような事例だけでなく、

医学部卒の地域医療コーディネーター

医学部卒の医療機器アドバイザー・開発者

医学部卒の医療商社マン

医学部卒の弁護士(スーパーエリートですね)

医学部卒の漫画家や小説家

など、医学部を卒業しても多くの道が開かれているわけです。いずれも、医学部で学んだことは無駄ではなく、むしろ医学部卒だからこその発想や世界観で力を発揮することができるはずなんです。

医学部に入って医者以外にやりたい事が見つかったら

学生の皆さんは、医学部に入った時点では、頭はいいかもしれませんが、まだまだ世間知らずの子供です。在学中に別の夢が出来る事だってあるでしょう。しかし、もし別の道へ進みたいと思っても、医師免許だけは取っておくことを強く勧めます。もし、私の子供が同じように別の道を目指したいと言ってきたとしても同じ事を言うでしょう。

医師免許をとっておき、そこからは別の道を進めばいい。

それには2つの意味があります。

つ目の理由としては、どんな道に進むにしても「医師免許を持っている○○○」と言う肩書を得る事ができ、それはどんな時にも他社にアドバンテージをもたらすからです。そして、必ず医学知識がある事が、多かれ少なかれその進む道の糧となるはずだからです。

つ目の理由としては、別の道に進んで学んだことで成長し、改めて医師として役立ちたいと思った時、医師になる事が出来るからです。医師国家試験に合格した時点で研修にいかず辞めればいいのです。思い直し、医師として医療行為がしたいと考えたときには何年後でも改めて臨床研修を受ける事ができるのですから。

まとめ

いかがでしたか。医学部生の親の立場でいろいろ考えている事をお話ししました。医学部に入ったら医者にならないといけないと言う固定概念を捨ててみると、意外に肩の荷が軽くなりませんか。でもせっかく小さな時から多くのものを犠牲にして、苦労の末に医学部に入れるだけの力を身につけたのなら、医学部に入っておいた方がいいことはわかっていただけましたか。

東大に行くか、医学部に行くか迷ったら、迷わず医学部に行け!です。

なぜなら、東大(理Ⅲ意外)に行っても医者にはなれないけど、医学部は医者になれます。

逆に、医学部卒なら、東大卒がなれるものには大抵なれます。

もしなれないものを敢えてあげるとすると「官僚」「政治家」かな。

今、あなたが、あなたのお子さんがとても優秀で進路を迷っているならば、医学部を目指しましょう。その優秀さは神様が与えてくれた「ギフト」なのですから。

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