目次
医師国家試験合格率算出方式の弊害
大学別医師国家試験合格率=その大学の医師国家試験合格者数➗その大学の卒業資格を得て医師国家試験を受験した生徒数。
※正確には受験者数を、純粋にその年に卒業し試験を受けた人数とした場合と、前年の不合格者数まで合わせた人数で算出する場合と2種類あります。
この医師国家試験合格率の算出方式が多くの医学部性を苦しめ、多くの医学部6年生を留年の憂き目に合わせています。
そんな事実を知っていますか?
医師国家試験を受験するための絶対条件として、「医学部医学科の卒業資格取得者」であるというものがあります。
それは、医学部生は医学部を卒業しないと受けられない=大学側としては卒業させなければ医師国家試験を受けさせずに済む!という構図を作り出しています。
結果、大学は自校の合格率上げるために「医師国家試験に合格できる学力のある生徒のみ卒業させる」、そうでない学生は「留年させる」という手段をとっています。
その学力を見るために医学部卒業試験という最後のふるいが用意されているのです。
医学部を真面目に6年間履修したにも関わらず医師国家試験に合格できないかもしれないから卒業させて貰えず、医師国家試験も受験さえさせてもらえない!なんてとても理不尽なことだと思いませんか。
学力不足で医師国家試験に落ちるのは仕方ありません。
でも挑戦さえさせてもらえないというのは本当に理不尽です。
私たち医学部生の親からすると、留年により又1年余計に学費を払わなければならないという経済的負担も無視できません。
どうして大学は医師国家試験に合格できそうもない生徒は卒業させず留年させるのでしょう?
それは、各大学の医学部間の評価が「医師国家試験の合格率」に依るところが大きいからでしょうか?
医学部受験生がよく目にする医学部ランキングでは、大学別偏差値や競争率が一番でしょう。
それ以外に医学部受験生やその保護者にとっては「大学別医師国家試験合格率」も気にするのでしょうか?
いや、学生本人はそれほど合格率は気にしていないかもしれませんね。
学生にとって医師国家試験合格率=大学の学力レベル・ブランド力・魅力!というわけではないのですから。
その極端な例として挙げられるのが、東京理Ⅲ(医学科)は国内最高レベルの難易度の医学部で、ここは医師国家試験の合格率では全医学部の中でも50位前後でしかありません。
では、なぜ大学はそれほど合格率にこだわるのでしょう。
一番の理由は、文部科学省から私立大学への通達を読めばわかります。
医学・歯学の正規の課程を修めて当該年度の前年度末に卒業した者の医師・歯科医師国家試験の合格率(以下「当該年度合格率」という。)が70パーセント未満の大学は医学・歯学研究科に係る補助項目のうち、「大学院高度化推進特別経費」の補助金を交付しないものとする。
引用:文部科学省HP
要は私立大学は合格率が高くないと国からの補助金が貰えなくなるんです。
流石に国立は国の機関なのでこの対象から外されているようです(多分)。
私が思うにもう一つ「大学としてのメンツの為」というのも大きいのではと疑っています。
本来あるべき医師国家試験合格率算出方式とはこれだ!
本当の意味でその大学の医学部教育のレベルを推し量るべき算出方式はどんな方式なのでしょう?
私の考えるに
「その年のその大学の医師国家試験合格者数➗その年のその大学の6年生総在学数」
この算出方式だと、大学側が卒業試験で医師国家試験の受験可能者をコントロールできなくなり、本当の意味での大学の実力がわかるのではないでしょうか。
中には、「それなら大学はきっと5年生から6年生に進級させる試験を厳しくして5年生留年を増やすだろう!」という人もいるかもしれません。
そうかもしれません。
しかし、実は5年生から6年生への進級で留年することはあまり考えられないのです。
余程、年間の授業をサボったり試験で最低の成績だったりすれば別ですが、大学側のコントロールで留年させられるような機会が実は少ないのが5年生なのです。それはどこかの機会にまたお話ししましょう。
いずれにしても、この算出方式なら、受験者数は関係なくなるので、受験者数が多くても少なくても一緒な訳です。
ということは、大学側としても成績下位者を卒業させず留年させる必要もなくなるため、受験できる生徒が増えるはずなのです。
医学部の卒業試験は医師国家試験を想定した内容になる傾向にある
医学部の卒業試験内容は、各大学に一任されているため大学ごとにその内容は異なります。
そしてその試験内容は、大学内の各教授が作成するのですが、教授によってはとても意地悪な難しいマニアックな内容だったりすることもあるようです。
しかし、最近ではそのような教授任せの試験内容では国家試験合格率を上げることは難しいとわかってきたのか、卒業試験=医師国家試験に準じた内容変わってきているようです。
我が子の通っている医学部でも、今まであまりにも医師国家試験とは範囲や傾向が異なる教授の趣味のような卒業試験内容になっていたことが問題になり、上記のように医師国家試験を意識した内容に変更になったと聞きました。
医師国家試験合格基準は相対評価であることの恐ろしさ
医師国家試験は毎年10,000人前後の医学部卒業資格者が受験し,その中の約90%が合格しているのが例年の平均値となっています。.
医師国家試験には、合格基準があり、80%以上取らないといけない絶対評価の必修問題と、毎年合格ラインが変わる相対評価の一般問題、臨床実地問題があります。
受験生の殆どは、それこそ死に物狂いで勉強するし、そもそも合格ラインにある生徒しか卒業できず受験しないのですから、前述の80%以上必要な必修問題はクリアするわけなので、必然的に相対評価の試験に合否がかかってくることになります。
ですから、総じて言ってしまえば、医師国家試験は受験者の90%を合格させ、10%を不合格にすることが決められている国家試験だということです。
国に毎年補充が必要な新卒医師数は予測され割り出されています。
そして、毎年の医師国家試験の受験者数はほぼ一定しています。
ですから、国としては毎年訳90%前後の合格者を出す必要があるわけです。
ですから相対評価→要は上位90%が合格!となるのです。
医師国家試験の合格率90%を舐めてはいけない!
この【合格率約90%】という数値を見て、なーんだそんなに簡単なんだ!
なんて思った人は、勘違いも甚だしいと言わせてください。
この90%に入れるのは国内同世代の超優秀者中でわずか1〜2%なのです。
その理由を少し詳しく説明しましょう。
●まず、そもそも医師国家試験の受験資格がある人は、「医学部に合格し卒業資格を得た人」となります。
その医学部に入学するために「小学校→中学校→高校」と熾烈な受験戦争を勝ち抜き、全国学力上位2%とも言われる成績上位組にならなければなりません。
●そして、見事医学部に合格し入学できた全国の超優等生およそ9000人が、今度は医学部の進級をかけて死に物狂いで勉強をします。
超優等生とも言われる医学部生の内5%〜10%前後は、単位が取れず各学年で留年するとも言われています。
●必死に大学6年生まで進級すると卒業資格を得るための卒業試験があるのですが、冒頭に説明した通り、その試験でもやはり5〜10%落第・留年してしまい医師国家試験を受けられません。
そうやって超優秀な学生がどんどんふるいにかけられ、残った超超優秀な生徒が医師国家試験を受けるにも関わらず、それでも90%ほどしか合格できないのです。
そう思うと、果たして小学生の時に医師になりたいと夢を描いた人たちが、最終的に医師国家試験に合格できる確率は一体どれほどなのでしょう。
途方もなく小さな確率なのは確かです。
【まとめ】近いうちに医師国家試験の合格率算出方式は変わるかもしれません
冒頭から指摘してきたように、現在の医師国家試験の各大学の合格率算出方式には問題があります。
そのため文部科学省でも検討され、私が提唱した算出方式に近いものが検討されているようです。
何年度からかはわかりませんが、早く切替わればいいなと切に願います。
我が子が医師国家試験を受けるまでには無理なのでしょうが、これからの医学部生にとって有利に改定されていくといいですね。